ギャラリーhakoの恒例シリーズは、一辺20センチほどの箱をキャンバスに見立て、作家が思い思いの世界を閉じ込める展示だ。2013年4月の出品作も、木や紙、布、金属と素材は多彩。箱という制約があるからこそ、作家は素材の選び方、配置に細心の注意を払う。そのプロセスこそ、このシリーズの最大の魅力である。

素材選びが物語を決める
箱の中の世界は、素材によってまったく異なる表情を見せる。和紙と墨を使えば静かな日本的な風景が浮かび上がり、色鮮やかなアクリル絵の具と布切れを組み合わせれば、ポップで賑やかな物語が生まれる。2013年4月の展示では、作家たちが何を選び、どう加工したのか。その選択肢の幅が作品の個性を際立たせた。
紙とペンで描くミニチュアの世界
ある作家は箱の内側に細密なペン画を描き込み、古い書物の挿絵のような世界を作り上げた。紙の質感や筆跡の強弱が、限られた領域に奥行きを与える。この技法は、絵本の原画にも通じる繊細さだ。
布と糸で紡ぐ立体の物語
別の作家は布を切り貼りし、糸で縫い付けることで立体的な質感を生み出した。箱の中に小さなドレスやカーテンが現れ、見る者はその細工に引き込まれる。布の柔らかさと箱の硬さのコントラストが、作品に独特の温かみを与えている。
作家たちがよく使う素材とその特徴をまとめると、以下のようになる。
- 木材 — 箱自体の素材として、またミニチュアの家具や構造物に利用。彫刻や塗装で表情を変える。
- 紙 — 切り絵、折り紙、コラージュなど多用途。薄さと加工のしやすさが魅力。
- 布・糸 — テクスチャーと柔らかさを加える。刺繍やパッチワークで物語性を高める。
- 金属 — 針金や薄板を使って細かいパーツを作る。光沢や硬質な印象を与える。
- アクリル絵の具・水彩 — 色彩の表現に欠かせない。重ね塗りで深みを出す。
制作プロセス:構想から完成まで
箱の中の作品は、まずテーマの決定から始まる。作家は箱のサイズを測り、その中に収まる世界を想像する。スケッチを描き、素材を選び、試作を繰り返す。小さな空間ゆえに、一つ一つのパーツの精度が求められる。木片を切る際にはミリ単位の調整が必要だ。接着や塗装も箱の内側で行うため、細い筆やピンセットが活躍する。
2013年4月の展示では、作家たちがそれぞれ異なるアプローチで制作に臨んだ。ある作家は箱を横に倒し、内部を舞台に見立てて立体的なジオラマを構築した。別の作家は箱の蓋を開けたときにだけ見える隠し絵を仕込むなど、見る者の発見を促す仕掛けを施した。

このシリーズは、2012年の展覧会「箱の中に広がる無数の世界——「hako」展シリーズの軌跡」でその多様性が示されたが、2013年4月もまた新たな挑戦が見られた。箱の中に込められた細部をじっくり眺めることで、作家の手の動きや素材の質感まで感じ取ることができる。次回の展示ではまたどんな素材と物語が出会うのか——。すでに楽しみでならない。
