2013年春、ギャラリーhakoで開かれた「箱の中の物語」展。イラストレーターたちが自らの描く世界を、立体的な箱の中に閉じ込めた試みだ。壁に並ぶ原画と並び、箱の中に広がるミニチュアのジオラマが来館者の視線を捉えた。ある箱には絵本の一場面を切り取った風景が、別の箱ではコラージュとペインティングが組み合わさり、抽象的な物語を語っていた。
展示の概要とテーマ
「箱の中の物語」のテーマは「物語の断片」。参加した作家はそれぞれ、箱という限られた空間に自身の作品世界を象徴する瞬間や情景を閉じ込める。その断片は見る側の想像力を刺激し、箱の外へと広がっていく。展示された箱は手のひらサイズから30センチ四方まで様々で、それぞれが独立した小さな世界を形成していた。
制作過程に注目
展示をユニークにしたのは、完成作品だけでなく制作過程にも注目したことだ。ギャラリー内の一角には、作家が実際に使用した道具や素材が並び、プロセスを垣間見ることができた。例えば、ある作家は紙を何層にも重ねて切り抜き、箱の奥行きを利用して背景に遠近感を生み出した。別の作家は小さな電球を箱に仕込み、光の向きで陰影を変化させた。素材は多岐にわたる。
- 和紙や洋紙を使った切り絵
- アクリル絵の具による細密なペインティング
- 布や毛糸を用いたテクスチャーの追加
- 木片や針金による立体オブジェの配置
- 樹脂やクレイで作られた小さなフィギュア
これらの素材が組み合わさることで、平面のイラストレーションとは異なる質感と奥行きが生まれていた。

作家と作品のハイライト
中でもひときわ目を引いたのは、A氏の「森の奥の一室」だ。箱の中には古びた机と窓辺が再現され、窓の外には切り絵で作られた森が広がる。机の上には開かれた本と小さなインク壺。主人公がその場を離れたばかりのような静けさがあった。B氏の「旅の記憶」はコラージュとドローイングを組み合わせた箱で、切符の半券や地図の断片が貼られ、旅先で見た風景が重ね描かれていた。どの作品も、見る者にそれぞれの物語を想像させる力を持っていた。
ギャラリーの空間と鑑賞体験
ギャラリーhakoの空間は、こうした箱作品を鑑賞するのに適した広さだ。展示台の高さは目線に合わせられ、自然な姿勢で箱の中をのぞき込める。照明は各箱の上から柔らかく落とされ、影が立体感を強調していた。会期中には作家によるギャラリートークも行われ、制作時のエピソードや素材選びの意図が語られた。参加者は質問を交わしながら、作品の背景にある思考をより深く理解していた。

特にA氏が箱の奥行きを計算して配置した小さな鏡の反射は、空間をさらに広く見せる技法として会場で話題になった。箱という枠組みが、かえって想像力を解放する——そんな実感を得られる展示だった。2011年9月の絵本原画展でも、制作過程を箱の中に再現する試みがなされていたが、今回の展覧会はさらに多様な素材と手法を取り入れ、イラストレーションと立体表現の融合を深めていた。
