2013年5月、ギャラリーhakoで再び「hako」展が開かれた。箱という限られた空間に、アーティストたちがそれぞれの世界を凝縮して表現するシリーズだ。前回3月の展示が春の息吹を感じさせる小品だったのに対し、今回は素材や技法に挑戦的な作品が集まった。

箱の中に広がる別世界――2013年5月の展示から
今回特に目を引いたのは、透明なアクリルケースに水辺の風景を閉じ込めた作品だ。青く着色した樹脂、細かな砂利、乾燥した植物が、まるで水槽の中に小さな湖畔を作り出している。箱の側面から光を当てると、樹脂の層が反射して水面のような揺らぎが生まれ、見る角度によって表情を変える。
別の作品では、古い本の箱をそのまま台に使い、針金や布、紙粘土で作った人形が並ぶ。一つ一つの人形は数センチしかないが、衣服のしわや髪の流れまで丁寧に作り込まれ、拡大鏡なしでは細部を追いきれない密度だ。作家が実際に使った工具や資料の断片も箱の隅に置かれ、制作過程の一端をのぞかせる。
素材と技法の多様性
従来の「hako」展でも木片や布、紙は見られたが、今回は素材の幅がさらに広がった。
- 透明樹脂やシリコンで水中や氷の中を表現した立体作品
- 銅板を腐食させて模様を描くエッチング技法を箱の中に応用
- 陶芸の釉薬を施したミニチュアの器が並び、箱全体で食卓を再現
- 照明用の小さなLEDを内蔵し、箱の内部がほのかに光る仕掛け
これらの作品は、箱を“額縁”ではなく“展示装置”として機能させようという試みだ。内部に光源を仕込んだものは、周囲の照明を落としたガラスケースの中で浮かび上がり、美術館のインスタレーションのような臨場感を生んでいた。

箱という制約がもたらす創造性
手のひらに収まる箱という物理的な制約が、「hako」展の魅力の一つだ。作家は表現を削ぎ落とし、本当に大切な要素だけを詰め込む必要に迫られる。5月展ではその制約を逆手に取った作品が目立った。
特に印象的だったのは、箱の蓋を開けると同時に内部の仕掛けが動き出す作品だ。小さなぜんまい仕掛けで紙の鳥が羽ばたく様子や、蓋を開けたときの振動で砂が模様を描く仕掛け――箱を「開く」という行為そのものを作品体験に組み込んでいる。ギャラリーhakoが2009年から続けてきた「箱が開く展示」の系譜を、よりインタラクティブに発展させた形と言える。
過去の展示とのつながり
過去のテーマや手法を発展させた作品も多い。たとえば、箱が開く展示の記録で取り上げた作品群と同様、箱のふたや側面をキャンバスとして使う手法は、今回も多くの作家が採用した。また、2011年11月「hako」展:箱に閉じ込められた秋の世界で見られた季節感を閉じ込めるアプローチは、初夏の日差しや水辺の涼をテーマにした作品として再解釈されている。
同じ「hako」という枠組みでも、作家ごとのアプローチや素材、表現したい世界観は毎回異なる。何度か足を運べば、それぞれの作家の成長やテーマの変化を楽しめるだろう。
会場の雰囲気と鑑賞のポイント
ギャラリーhakoの空間は決して広くない。壁に沿って並ぶガラスケースの中に作品が収められており、鑑賞者は自然と身をかがめてのぞき込む姿勢になる。この「のぞき込む」という行為自体が、展示の大切な要素だ。
作品によっては、箱の奥行きや照明の当たり方で見え方が変わる。可能なら時間帯を変えて訪れてみるといい。特に窓からの自然光が差し込む午前中と、店内の照明だけになる夕方以降では、同じ作品でも表情ががらりと変わることがある。作家が在廊している日には、制作のきっかけや技法について直接話を聞ける貴重な機会にもなる。
次回の展示でも、作家たちが箱の中にどんな世界を詰め込むのか――予想を超えた素材や仕掛けに出会えるのが楽しみだ。
