2013年6月、ギャラリーhakoで恒例の箱展が開かれた。限られた立方体の空間に作家たちがそれぞれの世界を詰め込むというコンセプトは、続けるたびに表現の幅を広げている。この回では素材や制作過程への意識の高まりが感じられた。
箱という枠組みの魅力
箱展の根幹は「箱」という物理的な制約にある。大きさは手のひらに収まる程度で、内部に作品を設置する。この制約が逆に作家の想像力を刺激し、ミニチュアの世界、ジオラマ、コラージュ、絵画、立体物と、さまざまな表現を生んできた。2013年6月展でもその多彩さは健在だった。
箱の中の世界は、鑑賞者に覗き込む体験を強いる。小さな窓から内部をのぞくと、日常と違う時間と空間が立ち現れる。この「のぞき込む」という行為自体が展示の重要な要素だ。ギャラリーhakoの箱展は、そうした身体的な参与を引き出す点で他の展覧会と一線を画している。

2013年6月展の特徴
この年の6月展では「素材の選び方とその加工」に注目が集まった。作家たちは箱の質感や色合いにこだわり、作品と一体化させる試みを見せた。例えば、古びた木箱をそのまま使い、内側の風景と経年変化が調和する作品。金属製の箱に磁石でパーツを固定し、鑑賞者が自由に配置を変えられるインタラクティブな作品も登場した。
また、この回では「本」をモチーフにした作品が目立った。箱を開けると開かれた本のページが広がり、文字や挿絵が立体的に飛び出す仕掛け。これは「hako」展2011年6月 ― 箱をキャンバスに変えたアートの世界で見られた絵本の原画展示の系譜を引き継ぎつつ、箱というメディアに特化した進化形と言える。箱の中に収まる物語性が来場者の想像力をかき立てた。
素材と制作過程
作家たちは制作過程を公開することも多く、そのプロセスに関心が集まった。箱展では作家自身が箱を選び、内部を加工し、作品を設置するまでの一連の作業が展示の一部となる。2013年6月展では制作途中のスケッチや試作品も併せて展示され、完成品との比較が楽しめた。
使用された素材は多岐にわたる。
- 木材(箱本体、ミニチュア家具)
- 紙(コラージュ、本のページ、切り絵)
- 布地(衣装、背景のカーテン)
- 金属(針金、小さな道具)
- 樹脂や粘土(人物像、動物)
- 自然物(石、砂、葉)
これらの素材を組み合わせ、箱の中に独自の生態系が作り上げられる。作家たちは限られたスペースの中で密度を高め、鑑賞者の視線をどう誘導するかに苦心する。その試行錯誤の跡が展示から伝わってきた。

作家たちのアプローチ
参加作家の手法は個性的だった。ある作家は箱の内壁に絵を描き、それを背景に前方に立体物を配置する伝統的なジオラマの手法を取った。別の作家は箱を開けた瞬間の仕掛けを重視し、蓋の裏側に細密な描き込みを施していた。箱自体を彫刻のように変形させる作家もおり、作品は箱の枠を超えていた。
こうした多様なアプローチは箱展シリーズの長い歴史の中で培われてきた。初期から参加している作家もいれば、この2013年6月展が初参加という作家もいた。ベテランと新人の交流が展示に新たな刺激をもたらしていた。
展示空間の演出
ギャラリーhakoの空間自体も展示の一部として機能していた。白い壁に並ぶ無数の箱。それぞれが独立した世界でありながら、全体として一つの大きなインスタレーションを形成する。照明は各箱の内部が見えるように工夫され、時には箱の影が壁に映ることで別の景色を生み出していた。
会場では作家が在廊する日が設けられ、来場者と直接対話する機会があった。制作の意図や苦労話を聞くことで作品への理解がさらに深まる。ギャラリーhakoの特徴の一つであるそうしたイベントは、2013年6月展でも多くの来場者が楽しんでいた。
箱の中の世界は、その小ささゆえに見る者の集中力を高める。一つ一つの作品にじっくり向き合う時間は、日常の喧騒から離れた静かなひとときを提供してくれた。2013年6月展はそうした体験をあらためて提供する、充実した内容の展覧会だった。
