2013年7月、ギャラリーhakoは定例のグループ展「hako 2013 07」を開催した。このシリーズは番号で展覧会を識別する方式を採っており、今回は夏の季節に合わせたテーマが作品に通底していた。会場には約30点の箱作品が並び、いずれも手のひらに載る程度の大きさに仕立てられている。

箱をキャンバスに変える試み
ギャラリーhakoがずっと追いかけてきたのは、限られた直方体の空間にいかに物語や世界観を込めるかという問いである。2013年7月展ではその基本線を守りつつ、作家たちはより自由な素材と手法を導入した。アクリル絵の具や水彩に加え、コラージュ、刺繍、ワイヤー細工などが箱の中に同居し、立体と平面の境界が溶けるような作品が目立った。
過去の展覧会の流れを振り返ると、ギャラリーhakoは常に「箱」という制約の中で多様性を引き出してきた。例えば2010年「hako」展:箱の中の小さな宇宙では、ミニチュアの家具や風景が箱の中に閉じ込められ、まるで別世界への窓のようだった。2013年7月展はその系譜を受け継ぎながら、夏らしい透け感や涼しげな色彩が意識して選ばれている。
夏の空気を閉じ込めた作品群
展示作品の多くに共通していたのは、海や空、水辺を思わせるモチーフだった。青と白を基調にしたもの、透明な樹脂やガラス玉を用いたもの、さらには細かな砂や貝殻を加工して貼り付けたものまで、素材の幅が広い。一見すると箱というより小さなジオラマだが、蓋を閉じれば完全に収納される点がギャラリーhako独自のルールである。
作家たちは製作過程において、まず箱の内部に下地を施し、奥行きを計算しながら配置を決める。平面作品であれば額縁の裏側に手を加えることもあり、観る者は箱の正面から覗き込むように鑑賞する。この「のぞき込む」という行為自体が展示の醍醐味であり、作品との親密な距離を生む。
素材選びのこだわり
2013年7月展では、特に紙と布の組み合わせが多く見られた。和紙を貼り重ねて質感を出した作品や、麻布の上に刺繍を施したもの、古い地図をコラージュしたものなど、触感を意識させる作品が並んだ。ギャラリーhakoでは作家が自ら素材を調達し、箱のサイズに合わせて裁断する工程を重視している。そのため作品一点一点に作家の手仕事の跡が残り、量産品にはない温かみがある。

鑑賞者の体験
会場は銀座の路地裏にある小さなギャラリーで、壁一面に箱が棚のように並ぶ。作品の間隔は狭く、前の作品をじっくり見ると自然と隣の作品も目に入る。夏の日は外の喧騒を忘れ、一つ一つの箱に顔を近づけて細部を追う時間が流れる。作家の在廊日には直接話を聞く機会もあり、作品に込めた思いや技法の解説を聞けるのがファンには嬉しいポイントだ。
展示の最後にはコメントノートが置かれ、来場者が感想を書き残す。2013年7月展のノートには「箱の中に夏の記憶が詰まっている」「子ども時代の秘密基地を思い出した」といった声が多く見られたという。こうした来場者の反応が、次の展覧会のテーマや作家の創作意欲に影響を与えることも少なくない。
入場無料なので、ふらりと立ち寄った人がコメントノートに自分の夏の記憶を書き加えていく。箱の中の小さな世界を見つめながら、誰かの秘密基地を共有するような時間がそこにはある。
