ギャラリーhakoの展示室には、2014年の年明けとともに小さな箱が並んだ。この画廊の名前はそのまま「箱」を意味し、年に何度も開かれる箱展では、掌に収まる大きさの作品が中心になる。木箱の中に作られた部屋の断面、蓋を開けると現れる夜景、引き出しの中の小さな書斎。限られた空間の中に、それぞれ別の時間が詰まっている。
箱という共通の枠組みが生む多様な表現
箱展の面白いところは、参加する作家たちが「箱」という同じ制約を課される点だ。キャンバスの代わりに与えられた小さな器の中で、絵を描く作家、立体を作る作家、写真やコラージュを組み合わせる作家が、それぞれの方法で世界を立ち上げる。限られた奥行きと面積はむしろ創作の条件となり、空間の使い方ひとつで作品の性格が大きく変わる。
同じ箱でも、手前から奥へと視線を誘うように配置された作品、蓋を開けたときに初めて全体が見える作品、外側と内側の両方を作品の一部として使う作品など、アプローチは実にさまざまだ。一枚の平面に収まらない表現が自然と生まれるのは、この形式ならではの魅力だろう。2014年の箱シリーズの全体像については、小さな箱に広がる宇宙:ギャラリーhako「箱」シリーズ2014年展の記事で詳しく取り上げられている。

素材選びと制作過程:小さな世界を組み立てる
箱の中の作品づくりで最初の決め手になるのは、素材の選択だ。土台となる木箱は無垢の木材であることが多く、そのままの木目を見せるものもあれば、やすりをかけたりペイントしたりして質感を変えるものもある。中の世界を作る材料は、小さな作品だからこそ、ひとつひとつの選び方が作品の表情を大きく左右する。
- 無垢の木材——箱の土台。木目を活かすか、塗装で隠すかによって雰囲気が変わる
- 紙と布——壁紙やカーテン、本や小物の作成に使われることが多い
- 針金と樹脂——細かい立体パーツの骨組みを支える
- 拾い集めた日用品——ボタンや鍵、瓶の蓋などが現実の時間を作品に持ち込む
制作は奥行きの順に進むのが基本だ。背景の壁を貼り、床を作り、手前のオブジェを配置していく。最後に、光がどこから差し込むかを想像しながら全体を調整する。箱を開けたときの見え方を計算するのは、舞台装置を作るのと同じ考え方である。素材の手触りや重さ、経年変化まで想定して選ばれた材料は、完成した作品の中で静かな存在感を放つ。

小さな作品を覗き込む観賞の時間
箱の作品は、遠くから眺める絵画とは観賞の仕方がまったく違う。自然と腰をかがめ、目を近づけ、ときには箱の縁に手を添えて中の様子を確かめる。そうした仕草が会場の空気を作っていく。作品と観客の距離が近い分、細部の手仕事や素材の手触りは、じっくり見てこそ伝わる。
箱の中の世界は、視線の移動を誘う。同じ箱でも、右下の小さな椅子、奥の壁に掛かった絵、天井の照明と、見る場所によって新しい発見がある。一枚の絵画が画面全体を同時に捉えさせるのに対し、箱の中は視線をあちこちに巡らせる。そして、共通の枠組みがあるからこそ、並んだ作品を見比べる楽しみも生まれる。同じ大きさの器からこれほど違う世界が生まれるのか、という驚きは、何度訪れても新鮮だ。
1月の箱展——年の始まりの小さな行事
ギャラリーhakoでは、季節ごとに開かれる箱展がすっかり定着している。年末には、年末恒例の箱展――ギャラリーhakoの小さな世界で紹介されてきたように、一年の締めくくりとしての箱展が開かれてきた。年明けの展示はそれとは少し違う空気を持つ。新しい年の始まりに、まだ余白のある箱をどのように満たすか。作家たちにとっては、年頭に小さな世界を組み立てることが、その年の制作の調子を確かめる機会にもなっているように見える。
会場を離れる前に、ぜひ一度、箱の「裏側」にも目を向けてほしい。作品の正面だけでなく、外壁や側面、内部の角にまで手仕事の跡が残っていることが多い。中のオブジェが主役なら、それを支える箱そのものにも作家の仕事が隠れている。箱展を訪れるたびに、そうした細部の発見が小さな作品の見え方を広げていく。
