「Senrito」——千輪塔か、線理図か。ギャラリーhakoの箱展シリーズでは、タイトルを一つの解釈に縛らない。箱の中の形象から、訪れる人それぞれが物語を受け取るのが、このシリーズの流儀だ。2015年7月に開かれた「Senrito」展でも、線と輪のリズムが空間に静かなドラマを生んでいた。

素材が紡ぐ小さな物語
箱という枠組みの中で、作家たちは多様な素材と向き合った。天然木やベニヤ板を削り積み重ねた立体、和紙や洋紙を裂いて貼り重ねた柔らかな表情、透明樹脂に閉じ込めた繊維や顔料の層、金属線や布切れを組み合わせたミクストメディア——いずれも、手を動かす工程そのものが作品に時間の厚みを与えている。たとえば小さな木片一つをとっても、カッターで削る角度や紙やすりの回数で見え方がまったく変わる。そうした微細な判断の積み重ねが、鑑賞者の視線を箱の奥へと引き込むのだ。
2015年7月の本展でもう一つ印象的だったのは、箱の内部で用いられた彩色の手法だ。顔料を薄く何層も重ねることで、奥行きと光の透過が同時に表現されていた。下地にわざと凹凸を残し、その上から薄い絵の具をかけることで陰影が生まれる。技術的な選択が、箱の中の世界を単なるミニチュアの再現ではなく、独自の空気を持つ場へと変えていた。
展示空間と鑑賞体験
ギャラリーhakoの会場では、壁一面に並べられた箱を一つ一つ間近で見られる。照明の当て方によって箱の中の影と光のコントラストが際立ち、素材の質感が深まる。作品に込められた時間の長さや手数の多さは、近づいて目を凝らさなければ見えない部分にも宿っている。その発見の連続が、訪れる人にとって小さな旅となる。
素材と物語の結びつきを探求した2013年4月の展覧会から、この「制限の中の自由」という姿勢は受け継がれている。2015年7月の「Senrito」展も、限られた容積の中にどれだけ豊かな景色を閉じ込められるかという挑戦の一つだった。会場であの箱をのぞき込む瞬間に感じた静けさ——それが、しばらく記憶に残るのではないだろうか。
