ギャラリーhakoの2016年1月展は「H2O」をテーマに掲げた。水そのものを作品に使うことは少ないが、透明樹脂やガラス、アクリル板といった素材を重ね、水の持つ透明感や反射、流動性を箱の中に閉じ込める試みが並んだ。展覧会では、箱という限られた空間の中で、水が持つさまざまな表情をどう表現するかが問われた。
「H2O」というテーマの意味
水は形を持たず、光を透過し、鏡のように周囲を映し出す。箱アートにおいては、この「不定形で透明な物質」をどのように固定し、鑑賞者の目に届けるかが制作上の鍵となる。出展作家たちは、水の性質を象徴的に捉え、層を重ねた透明素材や光の角度を変える仕掛けを使って、箱の中で水が動くような錯覚を生み出した。テーマ「H2O」は単なる化学式ではなく、流れ、反射、深さという要素を作品に持ち込むための枠組みとして機能している。
透明素材と光の捉え方
水の再現に欠かせないのが透明素材の選択と加工だ。アクリル板やガラスの厚みを変えることで水の深さを表現したり、表面に細かな凹凸を付けて波紋を暗示する作品も見られた。また、箱の内部に仕込んだLEDライトや自然光の反射を計算し、時間や見る角度によって表情が変わるように設計された作品もある。こうした技法は、過去のギャラリーhakoの展示でもたびたび試みられてきた。例えば透明素材とレイヤーが生む奥行きで詳しく紹介されているように、層を重ねることで得られる奥行き感は、箱の中に水の空間を作り出す基本技術の一つだ。

箱の中の小さな水景
今回の展覧会では、水を直接的なモチーフにした作品が多く並んだ。その表現は多岐にわたる。
- 海や湖の水平線を、青いグラデーションの樹脂で描いたミニチュア風景
- 雨の日の窓ガラスを思わせる、筋状の模様を透明シートに焼き付けたコラージュ
- 水たまりに映る空を、鏡面仕上げの金属板と半透明のプラスチックで再現した箱
- 実際の水槽を小型化したような、アクリルケースに樹脂で閉じ込めた水草のオブジェ
いずれの作品も、箱の中に閉じ込められた水が、静かに時間を止めているかのような印象を与えた。見る者は箱を覗き込むたびに、光の加減で変化する水の表情を発見できる。
制作過程における素材選び
水の表現には、適切な素材選びが欠かせない。透明樹脂(エポキシやポリエステル)は硬化後にガラスのような透明度を持ち、着色や異素材の封入も可能だ。作家はまず、水の状態を決める——静かな水面か、波立つ海か、凍った氷か。それに合わせて樹脂の粘度や硬化時間を調整し、気泡の入れ方や層の厚みをコントロールする。また、バックの色や反射素材を活用することで、透明な素材だけでは出せない深みを加える。こうした素材と技法の緻密な組み合わせは、素材と光が織りなす箱の中の世界でも見られたように、ギャラリーhakoの展示で繰り返し探求されてきたテーマである。

一点、特に印象的だった作品を挙げると、厚さ2センチほどのアクリル箱に、青い着色樹脂を何層にも流し込み、最上面に細かな波紋を刻んだものがある。側面から光を当てると、層の境界が浮かび上がり、まるで深海の透視図のように見えた。その作品は、水の持つ「深さ」を物理的な層の数で表現しており、箱アートならではの手法と言える。
